病弱教育における自立活動(2):障害のある子どもの教育の広場
病弱教育における自立活動 | 武田鉄郎 |
---|
【PDFファイル】
- 病弱教育における自立活動の目標
- 健康状態の維持・改善等に必要な知識や技能の習得
- 健康状態の維持・改善等に必要な態度や習慣の育成
- 1と2を支える心理的な安定や意欲の向上
- 病気の多様化への対応と自立活動の指導計画
自立活動の内容は、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害などの感覚障害など大枠で全ての障害を網羅するように示されている。したがって、腎疾患、気管支喘息、進行性筋ジストロフィーなどの疾患に対応する自立活動の内容について理解しにくいという意見がよく聞かれる。
自立活動の目標は、個々の児童又は生徒が自立を目指し、障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培う、である。
病弱児の場合、以下の3点が重要な目的となる。
いわゆる自己管理する力を育てることが病弱教育における自立活動では重要になる。
病弱養護学校や院内学級に在籍している児童生徒の病気や障害は多様化し、それへの対応が必要である。そのために個別の指導計画を作成し、医療との連携を図りながら指導を進めていくことが求められる。
個別の指導計画を作成するに当たっては,個々の児童生徒の病気の種類や病状,障害の状態,発達段階,病気に対する自己管理及び経験等の実態に応じて,指導目標,指導内容及び指導方法などを個別に設定することが必要である。
疼痛管理のマーケティング効果
- 病気の多様化への対応
自立活動の内容は,「健康の保持」,「心理的な安定」,「環境の把握」,「身体の動き」,「コミュニケーション」の5つの区分の基に22の項目で構成されている。5つの区分ごとに示された内容の中から,一人一人の児童生徒が必要とする項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的に指導内容を設定する。
病気の多様化に対応していくためには,まずは自立活動の内容から主な慢性疾患のそれぞれに必要な項目を選定し,一般化し,それを基に各病気の種類別に指導内容を明確にしていく。慢性疾患をもつ児童生徒にとって一般的に必要となる主な具体的指導内容例を次に示してみる。
バレエ摂食障害
- 自己の病気の状態の理解
人体の構造と機能の知識・理解,病状や治療法等に関する知識・理解,感染防止や健康管理に関する知識・理解 - 健康状態の維持・改善等に必要な生活様式の理解
安静・静養,栄養・食事制限,運動量の制限等に関する知識・理解 - 健康状態の維持・改善等に必要な生活習慣の確立
食事,安静,運動,清潔,服薬等の生活習慣の形成及び定着化 - 諸活動による健康状態の維持・改善
各種の身体活動による健康状態の維持・改善等 - 病気の状態や入院等の環境に基づく心理的不適応の改善
カウンセリング的活動や各種の心理療法的活動等による不安の軽減,安心して参加できる集団構成や活動等の工夫、場所や場面の変化による不安の軽減 - 諸活動による情緒の安定
各種の体育的活動,音楽的活動,造形的活動,創作的活動等による情緒不安定の改善 - 病気の状態を克服する意欲の向上
各種の身体活動等による意欲・積極性・忍耐力及び集中力等の向上,各種造形的活動や持続的作業等による成就感の体得と自信の獲得(自己効力感の高揚)
これらの具体的な指導内容をさらに病気の種類別に作成していく。例えば,気管支喘息児の場合,
プロ拒食症拒食症プロ情報
- 自己の病気の状態の理解
- アレルギー反応の仕組み
- 気管支の構造と機能の知識・理解
- 病状や治療法等に関する知識・理解
- 感染防止や健康管理に関する知識・理解
- 各種の生活習慣の形成及び定着化
- 各種身体活動等による健康状態の維持・改善等、生活リズム調整
等が挙げられるが、具体的には、第5章の指導の実際で例示する。
このように病弱養護学校等における病気の多様化に対応することは,まずは病気の種類別に指導内容を明確にすることである。
実態を把握していく上で,教育的立場や心理学的な立場から実態把握を行うことはもちろん,病気による運動制限や食事制限等様々な生活規制に対して医学的な立場から情報の提供を受けたり,助言を得たりすることも重要になってくる。
また,目標を設定するに当たっては,個々の児童生徒の実態把握に基づいて,入院期間や療養期間等を考慮しながら長期的な観点に立った目標を設定するとともに,当面の短期的な観点からも目標を定めることが必要である。主体的に自立活動に取り組むことができるようにするためには,可能な限り児童生徒が目標設定の段階から個別の指導計画作成に参加し,自ら自己管理する力をつけることも重要なことである。
また、同じ病気であっても,病気の状態や発達段階および経験の程度等が個々に違うため,一人一人の児童生徒の実態に即して,指導目標,指導内容,指導方法などを個別に定め,個別の指導計画を作成することでさらに指導の個別化を図っていくことが求められる。
自立活動の指導を効果的に進めるには,指導上の配慮すべき点をあらかじめ検討する必要がある。病弱児の場合,次のことについては,いずれの児童生徒に対しても留意しなければならない。
- 体調把握と医療機関等との連携
- 主体的で意欲的に活動できる環境
病弱児は,日々,病状が変化するなど体調に変動がある。病状が悪化すると心理的にも不安定になりやすい。教員は,日々の体調を把握した上で指導を行うことが重要であり,そのために主治医や看護婦等の医療関係者との連携を密にしていくことが求められる。また,退院して家庭や前籍校に戻っても再発し,再入院するケースも珍しくない。病状にあった生活習慣を形成していくためには家庭や前籍校との連携を図ることも重要である。
児童生徒が主体的で意欲的に活動できる環境を整備し,成就感を味わうことができるように配慮することが必要である。そのためには,児童生徒が,目標を自覚し,意欲的に取り組んだことが成功に結びついたということを実感できる指導内容を準備することが必要である。また,自己管理しながら活躍している同じ病気の先輩の話を聞くなど,児童生徒が「あの人にできるのだから自分にもできるのではないか」という経験をもつことも重要である。
基本的には,児童生徒一人一人の実態に即して個別の指導計画を作成することになっているので,指導形態としては一対一の個別の指導が基本となる。しかし,学習効果や指導の効率を高めるため,病気の種類別のグループ編成による指導,学級単位の指導,ぬき出しなど様々な形態が挙げられる。特に,病状の悪化などから情緒的に不安定になっている児童生徒や,集団の中に入っていくことができない児童生徒に対しては一対一の指導体制を組む必要がある。いずれの指導形態を選択するかは児童生徒の実態,指導内容,教員の数等から検討し,可能な限り児童生徒が主体的に取り組める指導形態を工夫する必要がある。
ページの先頭に戻る
0 コメント:
コメントを投稿